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第143話 「2019年首都圏中学入試を振り返って」

2019年5月10日

前号まで10回にわたって2019年中学入試速報をお伝えしてきましたが、 今回は2019年首都圏(1都3県)中学入試を振り返って、全体の傾向や注目点について考えてみます。 なお入試データは首都圏模試センターが集計して公開している数値を使用しますが、 入試データを非公開の一部の学校があるため、受験者数には一部推計値を含んでいることをご了承ください。


1. 2019年首都圏中学入試 5年続きの増加で受験者数「47,200名」に

*2019年入試 都県別受験者数増減率推計値(数字は前年比の%)

数値は安田教育研究所の集計による          
  男子校 女子校共学校 合計
東京 106.9% 105.3%110.0% 107.8%
神奈川 85.7% 100.8%116.5% 103.7%
千葉 ――  116.7%106.1% 107.0%
埼玉 108.0% 100.8%104.3% 105.3%

2019年3月卒業の首都圏小6卒業生は前年より約1万名多い29万4,000人で、秋の大手公開模試の受験者数から2019年入試の受験者数が5%前後増えることは予想されていましたが、結果はまさに予想を裏付けました。受験者数は2018年→2019年で、45,000名→47,200名と約2,200名位の増加で、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災で減り続けましたが2014年をボトムとして5年連続の増加です。また受験率では15.82→16.04%と約0.2%の上昇です。また上記の表を見れば一目瞭然ですが共学校の増加が最も大きくなっています。


この受験者数増加の要因としては、

(1)小6生徒数自体の約10,000名の増加(特に東京23区の増加が大きい)

(2)高大接続改革(大学入試改革)への対応(思考力、判断力、表現力、課題解決能力など)における中高一貫校の優位性

(3)ますます進化するグローバル社会の拡大に対する中高一貫校の英語教育、国際理解教育、海外研修などに対する取り組みの優位性

(4)首都圏の40~45歳前後の保護者には私立中高一貫教育経験者が多いこと

などが考えられます。


2. 2019年首都圏中学入試の傾向・特徴

跡見学園
跡見学園
(1)受験者の増加は中位層で大きく、そのためSS50前後の中堅レベルの学校で難化傾向が目立っています。また前述のように共学校の受験者増加が目立ちますが、中堅校では共学校だけでなく足立学園、明大中野や明法などの男子校、また跡見学園、江戸川女子、大妻中野、昭和女子大、東京女学館などの女子校の応募者増加も目立ちます。


(2)麻布、武蔵、駒場東邦、栄光学園、筑波大学附駒場、女子学院、フェリス女学院、早稲田実業などの最難関校やそれに次ぐレベルの学校の多くも受験者が増加していますが、ほとんどが小幅な増加で難易度にはほとんど変化ありません(募集規模の小さい雙葉や白百合学園は増加率が大きくなります)


(3)大学付属校人気の変化
ここ数年来の大学付属校の人気は続いていますが、よく見ると男子受験生はいくつかの学校で減り、女子の受験生はほぼ全部の学校で増加しています。(慶應中等部・中大附など)


香蘭女学校
香蘭女学校
(4)新設の午後入試や一科目入試に受験生が集まる傾向。
2019年入試では人気中堅校の香蘭女学校の午後入試、山脇学園の国語・算数1科目入試、晃華学園の午後入試、巣鴨の算数1科目入試、世田谷学園の算数1科目入試などが新設され大人気となりました。
これが初年度だけの現象なのか、来年以降どうなるのかは注視していく必要があります。



昭和女子大
昭和女子大
(5)女子校人気の復活(?)
桜蔭、女子学院などのトップクラスの女子校を除き、多くの中堅レベルの女子校は人気が低下し、受験生も減少気味といわれてきました。ところが(1)とダブりますが、今年の入試状況を見ると淑徳与野(1,448→1.769名)、国府台女子(995→1.228年)、神田女学園(62→167名)、昭和女子大(477→681名)、星美学園(60→90名)、東京純心学園(172→216名)、中村(150→218名)などの中堅上位から中堅下位の幅広い女子校で応募者が増加している学校が例年になく多く、女子校の人気復活(?)を感じさせます。


(6)上位進学校では過去1~2年の大学合格実績の状況が応募者の増減に直結しますが、中堅レベルの学校では大学進学状況以上に新しい時代に対応する「グローバル教育」、「ICT教育」や「アクティブラーニング(探究型学習)」などの「21世紀型教育」そして高大接続改革に伴う「大学入試改革」への対応の取り組みなどが学校評価の大きなポイントになっているようです。

さらに御三家などの難関校志望者の保護者にも広尾学園、三田国際学園、開智などの先進的な学校の「21世紀型教育」への取り組みに注目する方が増えているようです。

(7)感覚的なことになりますが、学校評価の基準が偏差値や大学合格実績などの数値化できるものではない学習面以外のプラスアルファの部分(生徒たちの元気さ、部活動の活発さ、先生たちとの密なコミュニケーションなど)が大きくなっているように思われます。


3. 多様化する中学入試、新タイプ入試の拡大

テレビや新聞などのマスコミ報道ですでにご存じと思いますが、近年の中学入試では従来の国語・算数の2科入試や国・算・理・社の4科入試とは全く異なる新タイプ入試が急速に拡大し、適性検査型入試、思考力入試、合科型入試、算数(国語)1科目入試、プレゼン入試など様々な入試形態を選ぶことができるようになりました。この背景に「グローバル教育」、「ICT教育」や「アクティブラーニング(探究型学習)」そして「大学入試改革」があり、入試問題あるいは選抜方法でそれへの対応を表現しているものと思われます。新タイプ入試と一口に言っても様々なものがあるので、二つに分けて見ていきます。なお入試の具体的な選考方法などについては「そうだったのか!中学入試」第130話  を参照してください。

*以下の数値データは首都圏中学模試センターの集計による


(1)適性検査型入試(総合型、論述型、思考力型、自己アピール型を含む)

公立中高一貫校の入学者決定はすべて適性検査(+報告書・面接など)により行われています。
10年程前から都内の私立中学でも多くは公立受験生を誘い込む目的で導入されるようになりました。現在では東京近県の私立中でも適性検査型入試を導入する学校が出てきました。

とりわけここ数年適性検査型入試の実施校と受検者が近年急速に増加しており昨年から今年にかけては実施校が136校→147校に増加、また実受検者は9,484→10,352名と9%増です。


(2)英語入試

英語入試はほとんどが選択入試で、たとえば国算社理の4科と国算英の3科の選択などです。英語(選択)入試の実施校は112校から125校に増え、志願者数・受験者数は選択の内訳が不明な学校があるため正確な集計は不可能ですが、首都圏全体で3,007名が志願して、1,826名の受験生が英語(筆記、会話など)で入試を受けたものと推定されます。

小学校の授業で英語が正式な教科になります(今までと異なり評価の対象になります)から、今後さらに英語(選択)入試が増えていくものと予想されます。


(3)1科目入試、得意科目入試

東京電機大
東京電機大学
 
1科目入試には算数1科目入試と国語1科目入試があります。以前から攻玉社が算数1科目・国語1科目の選択入試(ただし今年から国語1科目入試は廃止)、高輪は算数1科目入試を実施していましたが、2018年および2019年入試でいくつかの有力校が1科目入試を導入し人気を呼びました。市進学院の偏差値65以上では算数1科目入試の鎌倉学園、品川女子学院、栄東、偏差値60台では巣鴨や世田谷学園、普連土もあります。また得意科目で勝負できる得意科目入試の導入校も増え人気を呼んでいます。得意科目入試の多くは4科目から得意な2科目を選んで受験する入試です。東京農業大学第一は算・理と理系科目に限定ですが、東京電機大、日本工業大駒場では4科目から任意の2科目(ただし日本工業大学駒場は理社の組み合わせは不可)を選択。目白研心では国算、算理、国社、国英からの選択です。


(4)新タイプ入試の今後の展望

品川女子学院
品川女子学院
 

新タイプ入試の実施校、受験者は確実に拡大していますが、量的に見ればまだまだ国語・算数の2科入試や国・算・理・社の4科入試が受験者総数の95%以上を占めています。

また新タイプ入試の導入校はほとんどが中堅以下のレベルの学校でした。しかし2018年、2019年と偏差値60以上の上位レベルの学校でも新タイプ入試が導入されるようになっています。具体的には英語入試を実施している市川と今年から導入の慶應湘南藤沢、算数1科目入試の鎌倉学園、品川女子学院です。偏差値60台では巣鴨や世田谷学園、普連土もあります。今後も新タイプ入試の実施校はさらに増えると思われ、上位校での導入もいくらかは増えるでしょう。

しかし御三家などのトップ校やそれに準ずるレベルの学校では今まで通りの4科入試が続いていく可能性が大です。御三家などの難関校の入試は非常に高いレベルの思考力や表現力を要する問題で、単なる暗記で解けるような問題はほとんど出題されていません。あえて思考力型入試などの新タイプ入試に変えていく必要がないのかもしれません。

また小学校での英語導入については、導入を急ぐ文科省により指導方法や担当教員の問題など未解決の課題がある状態で先行実施されようとしており、入試への英語導入についてはしばらく様子を見た方がよいと判断している私立中学も多いようです。


4. 経済的変動と中学入試

リーマンショックによる大きな景気の落ち込みがありましたが、その後の景気回復が長く続いています(最近黄信号が点灯しているようですが)。しかしその中で経済的格差が拡大して、富裕層と生活困難層、正規雇用と非正規雇用などの格差が広がっているといわれています。

私立中入試に臨む家庭は経済的には余裕のある層であると思われていますが、その影響は中学入試の世界にも及んできているようです。


(1)ブランド校人気の復活

御三家などの難関進学校や早慶などのトップクラスの大学付属校などとは異なる、私立中入試に特有のブランド校(併設の小学校があり私学の中でも学費が高いことで知られる立教、青山学院、成蹊、学習院、成城学園、玉川学園などの大学付属校)の人気が上がってきています。

これらの学校の保護者には代々の資産家が多く、子供を是非とも一流国立大や難関私大に進ませたいとは考えない人が多く、偏差値や大学合格実績とは異なる価値基準での学校選びをしています。


(2)「特待入試」人気

近年の中学入試では「特待入試」が非常に増えています。もともと私立中入試は経済的に余裕のある層のもので高校入試や大学入試と異なり「特待生」とは関係がない世界でした。しかし中学入試の大衆化によって中学入試に参入する層が拡大し、必ずしも経済的に余裕のある層ばかりではなくなっており、とりわけリーマンショック以降にその傾向が強まっています。

「特待入試」の受験者の増加を見ていると、「特待入試」で特待生に合格し、入学金や授業料の免除という特典を受けられればとてもありがたいと考える家庭もかなりあるのでしょう。最近は入学金免除と授業料3年間免除などの大盤振る舞いもあります。また「特待入試」は一般入試のほか、公立一貫校との併願者の多い適性検査型入試の多くで行われています。学費がただの公立一貫校志望者と特待生合格を期待する層は重なっているから当然です。

(終わり)

[次回予告] 「2019年大学合格実績が伸びた注目校(1)」

次回は大学合格実績を伸ばしている学校について考えます。
1回目は東大合格者トップ10や国公立大合格実績にスポットを当てて見ていきます。

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